スノーボードワックスのかけ方や頻度、ワックスを塗る順番を詳しくまとめました。
「どんなワックスを、どのタイミングで、どのくらい塗ればいいの?」
という疑問の解消にお役立てください。
ホットワックス(固形ワックス)とスプレーワックスのメリットとデメリットも紹介しています。
ちなみに、この記事の筆者はゲレンデ歴30年以上で、SAJスキー準指導員とSAJスノーボード指導員のダブルライセンスを保有しています。
SAJとは
スノーボードにワックスを塗る理由
スノーボードにワックスを塗らなくても、雪の上を滑ることができます。
それなのにワックスをかけるのは、
- 滑走性を良くする
- ソールの酸化を防止する
の2つの目的があるからなんです。
ワックスで滑りが良くなる
ワックスを塗るとツルツルして、雪面との摩擦抵抗が少なくなります。
さらには、水はけをよくして滑走性がアップします。
雪がソールと擦れたときにできる水は、滑る板のブレーキになってしまうんですよ。
ソールの酸化防止
スノーボードの滑走面(ソール)は、空気に触れていると酸化してワックスを吸収しにくくなります。
ワックスが乗りにくくなることで、
- 滑走性が落ちる
- 滑るとすぐ剥がれる
ことになり、ワクシング頻度も増えてメンテナンスが大変になってしまいます。
スノーボードに塗るワックスは2種類ある
スノーボードに塗るワックスには、
- スプレーワックス
- ホットワックス(固形ワックス)
の2種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、ご自身のスノーボードライフに合わせて選んでくださいね。
スプレーワックス
ワクシング作業の所要時間:およそ5分
缶に入った液体ワックスをスプレー式に塗布していくワックスです。
メリット
- 値段が安い
- 手間がかからない
- 場所を選ばずワクシング作業できる
とにかくお手軽お気軽に済ませたいなら、スプレー式一択!
ただし欠点は、リフト数本乗っただけで効果が薄れるってこと。
お昼時間にソールをみたらワックスが落ちてたなんてよくある話。
ゲレンデで塗ろうとしたら「ワックス成分が冷え固まってちゃんと塗れない。。。」なんてこともあるから注意してくださいね。
ホットワックス(固形ワックス)
ワクシング作業の所要時間:およそ1時間10分
固形のロウを溶かして塗り込むホットワックス。
スノーボードのソール(滑走面)には、目に見えない小さな小さな気孔(アモルファス)が無数にあります。
アイロンの熱でワックスを溶かしつつ気孔を広げて、ワックスを流し込んでいくため、持ちも滑走性もスプレーワックスとは段違いの良さ!
塗って冷やして剥がしてと手間がかかるのが欠点ですが、それを補うだけの大きすぎるメリットがあるので、プロライダーもオリンピック選手もみんなホットワックスを使ってます。
ワックスメーカーのラインナップも、ほとんどホットワックスばかり。
ということで、スノーボードのワックスといったらホットワックスですよ。
ホットワックスには種類がある
ホットワックスは、
- クリーニングワックス
- ベースワックス
- 滑走用ワックス
の3つに分けられます。
さらに、滑走用ワックスは、パラフィン系とフッ素系に分けられます。
お店で売ってる1ケース1,000円ほどのワックスはすべてパラフィン系。
フッ素系ワックスはフッ素の配合度合いにもよるが、パラフィン系より小さいのに値段が2~6倍ほどに跳ね上がるので、手に取る人は少ないんじゃないかな?
さらにフッ素100%もあるけれども、1gあたり1,000円もする競技向けワックスとなっています。
ホットワックスはメインゲレンデの雪温で選ぶ
ホルメンコール、TOKO、SWIX、ガリウム、マツモトワックス。
たかがワックスといえども、ワックスメーカーはたくさんあるうえに、いろんな色のワックスをラインナップしているのでどれがいいのか迷いがち。
ワックスは、色によって対応雪温が違うため、シーズンを通してたくさん滑るゲレンデの雪温に合ったものを選ぶと失敗しませんよ。
各社で対応表を出しているので、チェックしてから購入しましょうね。
ちなみに、メーカーは個人的にガリウムかマツモトワックスがおすすめです。
日本でシェアが高いのが、宮城県仙台市に本社を置くガリウム。
人と違うこだわりを持つライダーに人気なのが、同じく国産のマツモトワックス。
両社ともに、トップライダーも使用しているので、選んで失敗はないでしょう。
なんといっても、国産メーカーが日本の雪にあったワックスを作っているんですから、サイコーなんです。
メモ
スノーボードにワックス塗る頻度とタイミング
「スノーボードのワックスは、いつ塗ったらいいんだろ?」
板を最高の状態にしておこうとするなら、最適なときに必要なだけワックスすることが欠かせません。
ホットワックスを、いつ何回塗ればいいのか。
その答えは、
- シーズン前後に合わせて5回と
- 滑走2日間につき1回
が目安です。
さらに、スノーボードを包んでいるビニールを破いたときに4回塗っておきましょう。
メモ
新品の板のビニールを剥いだとき(初期メンテナンス)
塗る回数:ベースワックス2回、滑走用ワックス2回
ポイント
新品スノーボードを包んでいるビニールは、輸送中の傷防止やエッジで人を傷ないようにするためだけではありません。
ソールの性能を維持する役目もあり、滑走面が空気に触れることを防いでくれています。
言い換えると、ビニールをはがしたその瞬間から、板のソールは空気に触れ酸化が始まっていくということ。
よって、新品で買った板を大事にしたいなら、ビニールむきむき即ワクシング必須です。
シーズンインして最初に滑りに行く前
塗る回数:ベースワックス2回、滑走用ワックス2回
ポイント
シーズン前、もしくはシーズンインして初滑りする前に、入念にワックスを塗ります。
ここでベースを作っておけば、シーズン通してワックスの持ちが良くなりますから♪
とはいえ、ベースを2回塗って、滑走を2回塗る・・。
もちろん、塗るつど剥がす必要あるので、塗る→剥がすを4回やらなければならない・・・。
ワックスが冷え固まる時間も入れると、5時間はかかる大仕事です。
面倒ですよねww
「そんなに時間を取れないよっ」てなら、ベース1回滑走2回。
さらにもっと省略するなら、ベース1回滑走1回。
ポイント
シーズン中は2回ゲレンデに立ったら塗ろう【理想は毎回】
塗る回数:滑走用ワックス1~2回
最低でも、スキー場に2日間行ったらワックスしましょう。
本音をいえば、1回ゲレンデに立ったらその日のうちにワックスを塗るのが理想です。
とはいえ、疲れて帰ってきてから作業するのもしんどいし、寒いし。
ということで、妥協して、スキー場で2日滑ったら塗るようにしてくだいね。
なぜ2回滑ったら塗るの?
- スキー場に2回行くとエッジ付近のワックスはほぼほぼ剥がれます
- 毎回塗っても、2回に1度塗っても、正直言って体感的にはそれほど変わりません
ちなみに、ワックスを剥がすのは、滑りに行く前の日か当日の朝がベストです。
シーズン終わり
塗る回数:ベースワックス1回~2回
1シーズン、お疲れさまっ!
翌シーズンまで滑ることはないけれども、ここでのワックスがと~っても大事。
ベースワックスを塗ってソール(滑走面)が空気に触れないように鉄壁ガードしときましょう。
できることなら、2回ワックスを塗ってくださいね。
1回目は、ソールの汚れ取り。
塗ったワックスが温かいうちに削ります。
2回目は、オフシーズン中の保護用。
まんべんなく塗った状態で、春・夏・秋を過ごします。
ワクシングに必要なもの&代用できるもの一覧
スノーボードのワックスがけで、準備すべきものと代用できる物をまとめました。
スプレーワックスとホットワックス(固形ワックス)でそれぞれ用意するものは、次のとおりです。
スプレーワックスで使うもの
最低限必要なものは、ワックスとコルクです。
スタンドは、家庭にあるもので代用可。
ワックスリムーバーはなくても大丈夫だけど、持続力や滑走性を高めたいなら用意しましょう。
ホットワックスで使うもの
なければならないものは、ワックスとスクレーパーだけ。
アイロンは家庭にあるもので代用できるし、スタンドは雑誌を重ねたものでも十分です。
バインディングよりも高さがあり、板の前後を支えられる安定したものならば何でもOK。
ブラシ・ワクシングペーパー・ワックスリムーバーは、無くても問題なし。
ワックスのかけ方
スプレーワックスとホットワックスのかけ方を、手順を追って紹介します。
スプレーワックスのかけ方
クリーニングをする
ワックスリムーバーを使って、古いワックスを取り除きます。
スプレーワックスを吹きかける
滑走面にワックスを吹き付けます。
コルクでこする
コルクで何度も何度もこすります。液体のワックスがなくなり、滑走面にツヤが出るまで続けます。
ブラッシング
滑走面をブラッシングして整えて完了です。
ホットワックスのかけ方
クリーニングをする
ブラシでゴミを落とします。
メモ
シーズン終了して翌シーズンまで保管するときは、ワックスリムーバーも使って汚れを落としてください。ベースワックスを塗る
ベースワックス塗りは、主にシーズン前後の作業です。
まず、ワックスを生塗りします。
生塗りとは
固形のワックスを、ソール(滑走面)に直接こすりつけること。
生塗りをすると、細やかなワックス片がソールにくっつきます。
アイロンを当てたとき、生塗りしたワックスが溶けるため、ムラなく滑走面全体にワクシングすることができます。ワックスをアイロンに当ててソールに垂れ流します。
滑走面に置いたワクシングペーパーをアイロンと一緒に動かし、均一にワックスを塗ります。ワクシングペーパーは無くても困りませんが、できれば使ってあげてください。
塗りながら、スノーボードで一番薄い部分のデッキ(表面)を触って、人肌ぐらいの温かさであれば適温です(おおよそ40度ぐらい)。
アイロンの温度
アイロンの温度は100度~110度ぐらいにします。
130度のような高温を長く当て続けるとソール焼けを起こしてしまい、ワックスが染み込まなくなります。
※ソールはポリエチレン製なので、80~150度で軟化して構造が変わってしまいます。ワクシングペーパー
ワクシングペーパーを使うと、ワックスを薄く均一に伸ばせるので剥がす作業(スクレーピング)が楽になります。
また、ソールを熱やアイロンから守る役割もあります。塗り終わったら、常温で1時間置いておきます。最低でも30分。
こうすることで、ワックスが固まりアモルファス(気孔)が閉まるので、滑走面にワックスが染み込みます。作業は常温で行う
塗るのも冷やすのも常温で。屋外や寒い小屋でやるとアモルファスが縮んでワックスを吸いにくくなります。ワックスが冷えたのを確認したら、スクレーパーでワックスを剥がします。
スクレーパーは、滑走方向と同じく前から後ろに動かします。スクレーパー
スクレーパーの変わりに指矩(さしがね=金属のものさし)を使う荒業をやってのけるツワモノもいるが、ソールに傷をつけるので必ずスクレーパーを使おう。
スクレーパーは、使っているうちに徐々に角が丸くすり減っていく。ワックスが削りにくいなと思ったら、紙やすりでこすると復活するよ。ソールを見回してみて、削り残しがなくなったらOKです。
滑走用ワックスを塗る
ベースワックスを塗るのと同じ要領で、滑走用ワックスを塗り込みます。
ブラッシングをする
ブラシを使って、ワックスの削りカスを取り除いて仕上げをします。
家庭用アイロンで代用できる
スキー・スノーボードアイロンは6,000円~10,000円とお値段高め。
そこで、代用品として活躍するのが家庭で使う衣類用のアイロンです。
ただし、3つの注意点があるのでお気をつけて。
- 細やかな温度管理ができないのでソール焼けを起こすかも
- 尖った角や鋭角な側面でソールを傷つけるかも
- ワックスが残ったまま衣類にアイロンをかける恐れあり
アイロンの温度
家庭用アイロンを使っているインストラクターって、けっこう多いんですよ。
ブラシの役割と種類
仕上げのブラシには、
- 静電気を取り除く
- ワックスの削りカスを取り除く
という2つの役割があります。
静電気を取り除く
ソールから静電気を取り除くと、滑走性が良くなります。
ワックスの削りカスを取り除く
ストラクチャーに挟まった剥がしたワックスを取り除きます。
ストラクチャーとは
なお、ブラシには
- ナイロン
- ボア(猪毛・豚毛)
- 馬毛
の3種類があります。
硬いものから順(ぶた・いのしし→ナイロン→うま)に使って仕上げていくのがセオリーですが、用意するのもブラッシングするのも手間なんですよね。
ということで、ぶっちゃけ馬毛さえあればOKです♪