[char no="1" char="筋太"]横隔膜は腹式呼吸に欠かせない筋肉の一部だ。スポーツで動作を良くするためにも有効な筋肉だから、たかが横隔膜と侮ってはいけないぞ。[/char]
横隔膜の構造と役割
横隔膜と聞くと、薄い膜を想像しちゃうと思うんだが、実は、横隔膜は「膜」ではなく、厚くて伸縮性のある筋肉なんだ!
位置は、肋骨の下の方(胴体のほぼ真ん中)にあり、スグ上には肺がある。
形は、ドーム型をしていてお腹を上からすっぽりと覆って、胸と腹を分ける壁になっているんだが、3つの穴が開いている。
1つ目は、下行大動脈などが通る「大動脈裂孔」、2つ目は、下大静脈が通る「大静脈孔」、そして3つ目は、食道が通る「食道裂孔」だ。
胴体を上下に分ける壁だが、口から食べたものは食道をとおり胃腸を経て体外に排出されるし、血管や神経の通り道としても
余談だが、焼肉でハラミとかサガリと呼ばれる部位は横隔膜なんだが、膜じゃなくてしっかりとした厚みがあることからも、内蔵ではなく、ちゃんとした筋肉であることがお分かりいただけると思う。
※ハラミは背中側の薄い部分で、サガリは肋骨側で下に向かって下がっている部分のお肉だぞ。
ちなみに、しゃっくりは横隔膜の痙攣によるものなんだ。
横隔膜の主な働き
横隔膜の働きといえば「呼吸をする」の一点に尽きるだろう。
呼吸には腹式と胸式の2つあるが、横隔膜は腹式呼吸をするときのメイン筋肉のひとつだ。
ドーム型になっている横隔膜が下にさがると胸腔が広がって、肺に空気が入り込む(吸い込んで)ことで吸気しているぞ。
一方、息を吐くときは、お腹まわりの腹横筋の動きによって横隔膜のドームが元に戻ることで、肺の空気を外に出しているんだ。
このように、肺が息を吸ったり吐いたりできるのは、肺の周りにある筋肉が動いて肺を大きくしたり小さくしたりコントロールする役割を持っているからなんだが、肺そのものに筋肉がなく自立して動かせないので、呼吸に使う筋肉(呼吸筋)に頼って息をしているんだ。
ということで、横隔膜は呼吸筋の1つ。
腹式呼吸のときにお腹が膨らむのは、お腹に空気が入っているからではなく、横隔膜が下がったことで胃や腸が前に押し出されているからという事実を、知っていたかな?
蛇足だが、腹を抱えて笑ったり、トイレでいきむときにも使われているんだぞ。
とにかく、人間が生きていくうえでとっても大切な筋肉というワケだ。
横隔膜とスポーツ動作
横隔膜は「腹式呼吸で吸う」筋肉なので、常に多くの酸素を必要とするスポーツ全般で重要なのは考えなくても分かるだろう。
1回で吸える空気の量が多ければ多いほど、全身に酸素を届けやすくなるから、息切れしにくくなるし疲れにくくなる。
カラダが疲れたり傷ついたりしたら、酸素カプセルに入って回復させたりするので、吸気量が多いのはメリットでしかないのだが、実は、横隔膜のスポーツでの重要性は呼吸以外にもあるんだ!
この頃のスポーツシーンでは、腹圧を高くすることが重視されていることをご存じだろうか?
腹圧が高くなると、背骨が真っすぐになって体幹が安定するから、パワーが伝わりやすくなり動作の俊敏性や安定性が良くなるんだ。
また、溜めていた力を一気に吐き出すようなスポーツ(例えば、重量挙げではバーベルを持ち上げるとき息を止める)では、パワーを生み出すために大切だぞ。
じゃあ、どうやれば腹圧が高くなるかを知れば、横隔膜の重要性がもっと分かってもらえるから、かいつまんで紹介しよう。
腹圧は、お腹回り(体幹)の筋肉によって作られるんだが、特に重要なのがインナーマッスル。
お腹の前と横は腹横筋、背中は多裂筋によって体幹をぐるっと囲んでいるんだが、これだけでは、上と下がぽっかり空いているので腹圧は高くならない。
そこで、上の横隔膜と下の骨盤底筋群で内臓を完全に取り囲み、体幹をガッチリ支持することで高い腹圧を得ることができるんだ。
(これ以上は、長くなりすぎてしまうし、横隔膜というテーマからかけ離れてしまうから、現在別ページでまとめている途中だ。のちほど詳しく紹介させていただこうと思っているので、少しばかり待ってくれ。)
さて、横隔膜は動作面でも大きな貢献をしていることを知ってもらったところで、横隔膜のトレーニング方法を見ていこう!
横隔膜のトレーニング方法
横隔膜はインナーマッスルなので、筋トレでピンポイントで鍛えることはかなり難しいのだが、お腹のインナーマッスルをしっかり動かせる「クラウリング・アブドミナル・スクイーズ」という腹式呼吸の動作が最適なので、紹介しよう。
まず、四つん這いになってお腹を丸めたら、お腹たっぷり息を吸う。
次に、背中を反り気味にしながら、息をしっかり吐きつくす。
たったこれだけ。
私たちは、息を吸うときお腹を反り、吐くときに丸める。
クラウリング・アブドミナル・スクイーズは、普段の呼吸と逆の動きをしているワケで、この動きがアウターマッスルの力を使わないでインナーマッスルをしっかり使うのに有効なんだ。
負荷は強くないので、回数多めの20回(~30回)を1セットとして、3セットやってみよう。
なお、分かりにくいネーミングにはこんな意味があります。
クラウリング 四つん這い
アブドミナル 腹部
スクィーズ 絞る
うん、日本語にするとしっくりするな!
寝そべって、息を深く吸って深く吐くを繰り返すだけでも横隔膜を鍛えられるんだが、せっかくだから、クラウリング・アブドミナル・スクィーズをやってみてはどうだろうか?