脊柱起立筋は体幹の筋肉で、首や背中の一番奥にあるんだ。
スポーツで高いパフォーマンスを引き出す源となるインナーマッスルだから、体幹トレーニングの定番となっている部位でもあるだけじゃなく、日常生活でも頻繁に使っている筋肉だぞ。
脊柱起立筋の構造と役割
「脊柱起立筋?あぁ、背中の筋肉でしょ?」
と背骨に沿って配置されていると思っている人が多く、あながち間違ってはいないが、これでは脊柱起立筋のことを正しく理解しているとは言いがたい。
「脊柱」という言葉を辞書で引いてみると分かるのだが、要約すると頸椎(けいつい)から尾椎(びつい)までの1本に並んだものを脊柱と定義しているんだ。少しわかりにくいかな?
いうなれば、頭蓋骨のすぐ下の首の骨から、お尻のすぐ上までを脊柱って呼ぶんだね。
この、脊柱のすぐそばを通る長い長い筋肉群のことを脊柱起立筋と呼んでいるから、背骨だけじゃなく首や腰にまで及んでいるわけだ。
実は、脊柱起立筋は1本の長い筋肉ではなく、8つの筋肉をまとめた総称ということはあまり知られていないのではないかな?
上から順に
- 頭最長筋(とうさいちょうきん):頭蓋骨~首
- 頸棘筋(けいきょくきん):首~背骨上部
- 頸最長筋(けいさいちょうきん):首~第6肋骨
- 頸腸肋筋(けいちょうろくきん):首~第7肋骨
- 胸腸肋筋(きょうちょうろくきん):肋骨の上から下
- 胸棘筋(きょうきょくきん):肋骨がある範囲の背骨
- 胸最長筋(きょうさいちょうきん):第1肋骨~尾てい骨
- 腰最長筋(ようさいちょうきん):第6肋骨~骨盤
となっている。
うむ、非常に分かりにくいな(笑)
まあ、いづれにしても、首から骨盤までにかけての深層の筋肉と思っていただいて間違いない。
筋体積は、数センチ立方メートルと人体最小クラスのごくごく小さいものから、146立法センチメートルを有する胸最長筋までさまざまとなっているんだ。
カラダを重力の反対側へ動かすための筋肉(重力は下に向けて働くから体を上に動かす筋肉)なので「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」に分類されていて、持久力を要することから遅筋繊維が発達しているのが脊柱起立筋の特徴といえるぞ。
脊柱起立筋の主な働き
脊柱起立筋は、首に付着している部分は頭を後ろに反らしたり横に傾ける働きをもち、それ以外の背骨や肋骨に付着している部分はカラダ(上体)を反らしたり横に曲げる(傾ける)働きがある。
日常生活では、かがんだ姿勢からスッと真っすぐ立つときや、姿勢を維持するための土台となっている筋肉だ。
無意識的に使っている筋肉だが、もし仮に脊柱起立筋が働かないとなれば、上体はいつもぐらぐらと揺れ続けていることだろうね。
地球上にいる限りは、生まれてから死ぬまでず~っと重力に引っ張られているわけだが、横になって休んでいるとき以外は常に重力に抗い私たちの姿勢をキープしてくれているので、使用頻度はと~っても高いぞ。
スポーツ動作と脊柱起立筋
脊柱起立筋は、すべてのスポーツであらゆる動作をするときに使われる、いや、必要な筋肉だから、どのスポーツでどのように作用するのか紹介するまでもないだろう。
ただ、あえて紹介するなら、カラダを起こすことがメインの働きであることから、跳ぶ・走るの動作においてチカラを発揮してくれるぞ。
例えば、両足を地面から離すことが多いサッカー・バレー・バスケ・バドミントン・ハンドボール・陸上の跳躍競技(走り幅跳び・走り高跳び・三段跳び・棒高跳び)などは、跳ぶときにカラダを反るので、脊柱起立筋を良く使うスポーツの最たるものといえるだろう。
走るときも、ダッシュする瞬間は前かがみになっているハズだから、カラダを起こして体幹を真っすぐにして速く走るためには欠かせない。
跳ねる・走る以外では、スキーやスノーボードならキッカーを使うエア系種目は空中での姿勢維持に必要だし、柔道やレスリングなら相手を背中に乗せて持ち上げるためのパワー源となってくれるんだ。
脊柱起立筋のトレーニング方法
脊柱起立筋は、背中のトレーニングか体幹トレーニングで肥大化させることができるぞ。
背中トレの場合、ほとんどがチューブかダンベルが必要だ。
だがしかし、背中トレで1つだけ用具いらずで脊柱起立筋に刺激を与えられる種目がある。
それは、バックエクステンション、いわゆる背筋運動と呼ばれるものだ!
チューブ&ダンベルトレーニングは背中をまんべんなく鍛えるものだが、バックエクステンションは、脊柱起立筋にターゲットを絞って鍛えることができる。
一方、体幹トレーニングは、自重でできるものがほとんどなので気軽にできるから、鍛えるなら体幹トレをオススメしたい。
体幹トレーニングも多岐にわたっているが、動きがなく強度も変えやすい、つまり初心者から上級者まで取り組めるのが、フロントブリッジ(プランク)とサイドブリッジ(サイドプランク)とダイアゴナルの3つだろう。
これらのトレーニングは、正直いって地味だ。
テレビや雑誌を見ながらでもできる手軽さを持つ一方で、見た目以上に強烈な刺激を筋肉に与えてくれるから、ナメてかかってはいけない。
最初のうちは、規定時間を規定セット数こなすだけでぐったりするだろうし、負荷をアップさせると慣れた人でも新鮮な刺激が味わえるぞ。
自重系トレーニングなのにこんなにツラいなんて、重力のチカラはすごいね。
その重力にいつでも抗っている脊柱起立筋は、もっとすごいね。